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「不憫じゃのぅ……」
「あはは、意外と大丈夫なんですよ。あたしの場合、小さい頃の記憶しか失っていないから」
そう言ってスヴニールは笑う。
「あの、お茶菓子、です」
青年がお盆を手に帰ってきた。乗っているのは、多分、クッキーだ。
「すまない。ありがとう」
「いいえ。十中八九、フラムに驚かせられたんでしょうから」
「フラム、とはなにかね?」
「あの、兎です。おーい、フラム」
窓から見える石像は、ぴくりとも動かない。この青年の頭を気にした。
「まったく……スヴニール、ちょっとフラム呼んできて」
「はぁい」
クッキーを食べていたスヴニールは外に駆け出す。兎に話しかけているようだ。
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