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「そこまで推測しているなら、何故それをわざわざ俺に聞く?」
秋継の回答にアルファは首を横に振った。
「勘違いしていませんか秋継? 私が聞いたのは、システムEDENにアクセスする理由では無く、アクセスした事によって電子精霊が見えるようになったかと言う事です。そこがポイントです」
アルファの言葉に、秋継はようやく重要性に気がついた。
アーデルは擬似人格プログラムや、オペレーションシステムとして造り上げたモノでは無い。
システムEDENに接触し、そのマップデータを知覚出来るようになったからこそ出会った存在なのだ。
つまり、アーデルは見えるようになった“電子世界の住人”なのである。
「そうか……。システムEDENは外宇宙を観測していたのではなく……別世界を観測していた?」
「Ja! アルファもそう結論を導き出しました」
『ようやく気付いた見たいだね』
パソコン画面にひょいっとアーデルが現れる。
「アーデル!」
秋継が驚きの表情を浮かべてディスプレイに眼を向けた。
それに釣られるように、アルファもディスプレイを食い入るように見詰める。
「やはり、これが認識出来るのはアルファのバグでは無かったと判断します」
そこで秋継は、アルファが始めからアーデルの姿が見えていた事に気がついた。
電子精霊とは電脳空間にアクセスさえすれば、誰でも見ることが叶うものではない。
知覚出来るチャンネルが合わない者には、一切認識が出来ないのだ。
つまり、そこから考えればEDENに接触し、MCN原形データ領域にアクセスした者にしか、電子精霊を知覚する事は不可能と言う意味になる。
仮想ネットワーク世界にでは無く、一つの別世界にアクセスした人間――それが電子精霊の観測条件なのだろう。
『アーデルたちが存在している電子世界。それをアーデル達は可愛く、“サイバーワンダーランド”って呼んでいるよ? それがネットワークに並列して生まれた電子の国』
「電子世界? 俺はてっきりサイバーネットワーク上に生まれた、ゲームのAIデータか自立プログラムの成れの果て……もとい、進化の果てかと思っていたぜ?」
アーデルがムッとするのを見て、言葉を焦り気味に選び直す。
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