クスリ、ダメ、ゼッタイ!!!

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「あ……ヒナタさん。どーも」 「お久しぶり。鍵谷くん、まだアルコール飲めないの?」 「1滴くらいは飲めるよ」 「それ、飲めないってことじゃん」 豪快に笑うヒナタは性別不詳、年齢不詳。 しかし、そんなことが気にならないほどの超絶美人だ。 今日は肩まであるサラサラの横髪を後ろでまとめ、スラッとしたパンツルックに身を包んでいる。 「あれ? ヒナタ? いつからそこに??」 そして、佐藤の幼馴染という噂もある不思議な人だ。 とりあえず、この二人が並ぶと圧巻すぎて、逆に吐きそうになるオレは、どこまでも庶民感覚なんだろうと思う。 注いでくれたオレンジジュースの瓶をテーブルに置くとヒナタは不機嫌そうに佐藤を睨んだ。 「ついさっき、ママに頼まれた買い物から帰ってきたとこ。つーかさぁ」 「ん?」 ヒナタは綺麗な指を佐藤の耳に伸ばすと、数あるピアスの中から輪になったものに指をかけ…… そして、引っ張った。 「い、いででででで!!!!!!」 「お前さぁ、“みかじめ”もらってんなら、こんなところで油売ってねぇで仕事しろよ」 「イテェ!!! なんだよ、急になんのイチャモンだよ!!!!」 そのまま、佐藤の耳を自分の口元に寄せるヒナタ。 佐藤が半泣きなのも無視だ。 ヒナタはニヤリと小さく笑うと 「店の裏で怪しげな3人組がいたんだよ。最近噂のヤク売りなんじゃないかと思うんだけど」 「えっ!?」 痛みを忘れたようにヒナタと視線をあわせる佐藤。 その瞳から真意を読み取るように、じっくり見つめ合う。 「今なら、まだ間にあうと思うよ」 ニンマリと笑うヒナタにどこか胡散臭げな目を投げかけつつ、佐藤はピアスにかかったヒナタの手を振り払った。 「違ってたら、今度なんかおごれよな」 「違ってたらねー」 軽い返事に顔をしかめつつ、佐藤は水割りを一気にあおると他人事のように座るオレの後ろ衿を掴んで引っ張った。
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