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建物と建物の狭い路地を歩き、ヒナタの言っていた店の裏を目指す。
肩をほぐしつつ、とりあえず横を歩く佐藤に作戦を訊ねてみた。
「なぁ、どうすんだよ? 人数的に不利だし意表ついて先制攻撃か?」
しかし、佐藤の答えは至って単純。
「いーーや、真っ向勝負」
「お前ね、オレほぼ丸腰だって分かってんだろうな」
何を考えているのか分からず、佐藤の顔を覗き込むが何やら考えがあるのだろう、人の悪い笑顔に大きなため息が出る。
「大丈夫ダヨ、鍵谷クンは強イカラ」
「なんだよ、その片言は。死んだら呪ってやるからな」
「お前に呪われるのなら、甘んじて受入れようじゃないか」
大仰なジェスチャーと笑顔を向ける相方にクソっと吐き捨てるオレ。
それを見て、佐藤はチラリと不思議そうに小首を傾げる。
「つーか、さ。鍵谷はケガした方が嬉しいと思ってた」
「……っな、ワケねぇだろ!」
「あれ? そう……?」
(なんてコト言うんだ!!)と、顔を赤くして睨むオレに、あまり納得していない顔の佐藤。
しかし、小さく肩を竦めて前を向くと
「ま、いいや。とりあえず」
視線の先にある少し開けた空間に照準を合わせる。
ゴミ箱や塀に腰掛けた三人組が目視できた。
「みーつけた」
ニッコリと笑う佐藤の笑みがあまりにも空々しくて、オレは知らず武者震いをしていた。
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