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「ねぇねぇ。新作のクスリ、売ってくれるってのは君たち??」
大きく明るい声で問いかけたのは佐藤。
その声に過剰に反応した三人組が、コチラを向いて目を眇めているのは、怪しいだけが理由ではないだろう。
丁度、背中に夕日を背負う形なので、前から見たら逆光でオレたちの顔は見えない。
「誰だ、オマエら」
訝しげな誰何の言葉に中国なまりを聞き取る。
佐藤は相手の疑念を払拭するように
「えーー? 何ってクスリ買いにきたんだけど?」
本日の仕事の成果が入った分厚い封筒を内ポケットから取り出し顔の横に掲げ、あくまで明るく言い放つ。
佐藤の言葉にコソコソと早口の外国語でコンセンサスを得ようとする三人組。
そりゃ、相談もしたくなるだろう。
急に現れた2人組が札束持って「クスリ買いたい」とか、どう考えても怪しすぎる。
真っ向勝負とか言ってた割に、親しげに話しかけるとか佐藤の考えていることはやっぱりよく分からない……。
オレは手持ち無沙汰で仕方なくキョロキョロと周りに目を向ける。
とりあえず、傘より破壊力のありそうなものを求めて……。
だが、残念なことにオレの求めるような長いエモノは見当たらなかった。
がっくりと肩を落としたオレの耳に、今度は佐藤の苛立った声が入ってきた。
「ねぇねぇ、アンタらがヤク売ってるんじゃねぇの? 違うの? 売るの? 売らないの?? オレ、300万ほど持ってきたんだけど?」と一気にまくしたてると、佐藤の提示した金額に三人組の言葉が止まった。
「サンビャク、マん??」
「そう」
平然と言ってのけてるが、その封筒の中に100万も入っていないことはオレが一番良く知っている。
それにしても話しかけたりキレてみたり、大ボラ吹いてみたり……、何がしたいんだか……。
しかしまぁ、こういう場合はとりあえず黙って成り行きを見守るのが吉だと、オレは黙りを決め込むことにした。
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