黒スーツと炎天下

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梅雨が明けたとたん強くなった陽射しがアスファルトを焼く。 平日、昼下がりの繁華街は陽炎で全体がゆらゆらと歪んでいた。 夜ともなるとネオンが煌き、大勢の人が集うこの場所も、真昼間の今はガランとして、まるでゴーストタウンの様相を呈している。 たまにすれ違う人は、いろんな意味で社会不適合者ばかりだ。 かくいう自分もその一員なのであまり偉そうなコトは言えないのだが……。 人通りのない道を歩くオレたちからおもむろに目をそらして、そそくさと去って行く誰かの背中を見送ってため息をひとつ。 (あーーー、クソ暑い) 心底、その一言に尽きた。 なんの因果でこのクソ暑いなか、真っ黒なスーツにネクタイ締めて、炎天下のこんな場所を自分は歩いてるんだろう……。 この時刻、太陽は真上にあるので、これだけビルがあるにも関わらず日陰すら見当たらない。 (マジ、なんの拷問だよ……) シャツのボタンも真ん中まで開け、ネクタイも申し訳程度にしか結んでいないのに、噴き出す汗、汗、汗。 手の甲で額から流れる汗を拭いながら、スーツのフロント部分でパタパタと扇いでみるが、全くと言っていいほど効果がなかった。 眉間の皺は深まるばかりだ。
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