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痛みもあるが、それよりはドクターに会いたくてまだかまだかと大人しく診察を待っていたオレの耳に、不意に診察室から予想もしない衝撃的な音が聞こえてきた。
「あ……ソコ………いい……」
「ココですか?」
「そう、もっと……、強く……ん…………」
(!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
何やら艶かしい息づかいと、ともに聞こえる声。
思わず立ち上がるオレに引きつった笑みを浮かべる佐藤。
「あ、ダメ……、それヤバい……あ………もっと……」
「本当にあなたはワガママですね。これでどうです?」
「あぁぁぁぁ」
さらに聞こえる嬌声に考えるより先に身体が動いていた。
「ド、ド、ドクター!!!!! アンタ、何やってんスか!!!!!!」
がたん!!!
叫びながら診察室のドアを開け、中に踏み入れる。
最初に目に飛び込んでくる普段ドクターが座っているデスクには姿がなく、オレはあわてて左手前に置かれている診察台へと血走った目を向けた。
ちなみに、若干涙が浮かんでいるのは自覚している。
そして、そこにあったものは、うつぶせに横たわる男を組み敷く白衣の男性の姿。
「ドクター? え? え? 何の冗談? え?」
つーーーと、涙が一筋頬を伝う。
テンパっているオレに、ようやく男の上に座るドクターが顔を向けた。
瞼の裏にいつも浮かぶのと寸分違わない優しい顔。
柔らかい髪がさらりと揺れ、メガネ越しにオレを見る目は澄んだ茶色をしている。
いつ見てもキレイだ……と、こんな状況でも目はドクターの顔に釘付けになってしまう。
一瞬にして真っ赤になったであろうオレの顔を一瞥すると、不機嫌そうに大きな息を吐いて、ドクターは組み敷いた男の後頭部をバシンとひと叩きした。
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