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「西澤さん、あなた急に変な声出したと思ったら、コレが目的ですか」
「バレたか」
笑いのためか小刻みに震える男の肩。
「鍵谷くんも鍵谷くんです。診察中の札、見えませんでしたか?」
「で、でも。その……なんか、万一そんなコトしてたら……と思うと、……つい……」
大きな体を小さくして言い訳をするオレに追い打ちをかけるドクター。
「神聖な診察室で、私がそんなふしだらなことをすると、君は思ったわけですか……」
キッと睨まれて、条件反射で「ち、違います、スイマセン」と頭を下げる。
「まったくあなた方は……バカですか」
憮然とした顔で男の上から下りたドクターは、ドカっと愛用の椅子に深く腰掛け大きなため息をついた。
そこに、おずおずと入ってきた佐藤は、いまだ診察台の上で笑いをこらえて震えている男に声をかける。
「若……、アンタ一体何してんスか?」
「肩と腰がガッチガチだったから、篠宮にマッサージしてもらってただけだけど」
笑いを噛み殺しながら、こちらに目を向けた山本組若頭こと西澤正義は、しかし、オレの顔を見た瞬間思いっきり吹き出して再び枕に顔を沈めた。
「鍵谷、ヤベぇ、泣いてるwwwwwww」
そんなに、泣いてるオレが面白いかよ。
安心したら涙止まんねぇんだよ。
つーか、マジでビックリしたんだよ。
ドクターが誰かとそんなコトしてるのかと思って、本気で頭が真っ白になったんだよ、悪かったか。
文句は頭の中をグルグル回るが、それを口に出すことすらできず、ずずっと、鼻をすすってその場にへたりこむオレに少し悪いと思ったのか若頭は診察台から下りて、ポンポンとオレの頭を撫でてきた。
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