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「暑い暑い暑い暑い、マジで暑ィなーーーー気温何度よ!? あー、やっぱ言わなくていいわ。凹みそうだし」
この暑さで頭が沸いたのか、隣を歩くツレの佐藤はまくしたてるように言葉を吐き出し自己完結すると、暑さに辟易としながら金色に近い茶髪を掻き上げた。
もちろん同じ黒スーツを着用している。しかも、少し首元を寛げる程度にしか着崩していない根性入った着こなしだ。
……うん。
まぁ、そりゃあ、暑いだろうよ。
つーか、見ている方も暑いがな。
心でツッコミながら半眼で様子を見ていると、
「太陽よ、オレに何か恨みでもあんのかよ……あぁ??」
中空高く輝く太陽を睨みつけようと顔を上げた佐藤は、当然の如く目を焼かれ、大仰な動きで「ジーザスっ!!」と頭を抱えている。
そして、ふと目についたのだろう足下に落ちていたコーヒーの空き缶を忌々しげに蹴り上げた。
ふわっと真上に飛び上がった缶は放物線を描き落下、地面スレスレで再び衝撃を加えられると、綺麗な弧を描いて雑居ビルの間に置かれたゴミ箱の中に吸い込まれた。
「うしっ! ちょっとスッキリ」
小さく声を上げた佐藤に、(コナ●君か、お前は……)そう心の中でツッコミを入れる。
パチパチ……。
周囲にいた目撃者数人が佐藤の無駄な器用さを褒め称えるように、まばらな拍手を送るが、当の本人はすでに興味を失ったように、再び薄汚れた街を歩き出した。
「あぢぃーーー、溶けるーーー。鍵谷、今すぐオレをエアコンガンガンに効いた部屋に連れてってー!!」
「バカ言うな。つーか、そんなに暑いなら、オレみたいにもっとネクタイ緩めたり、シャツ開けてみたり努力したらどうよ」
横に並んだオレの言葉に、驚いたように佐藤は真顔でオレを見た。
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