黒スーツと炎天下

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暑さ以外の要因で疲労を覚えるとは、予想外だった。 疲れきったオレは、何気なく佐藤の耳をジャラジャラと飾るピアスをひと撫でする。 ピアス同士が揺れ、シャラと乾いた音を奏でた。 「オレがチンピラなら、お前は女衒かチャラジゴロだな……」 オレの言葉にニヤリと笑う佐藤。 「うまいこと言うねー、鍵谷。ジゴロかぁ……! よし、だったら、オレ、一生鍵谷にたかって生きる!!」 「オレにたかんな、ボケっ。お前の顔だったら女くらいいくらでも引っ掛けられるだろ?」 「えーーー。どうせ、たかるならお前がいんだけどーー??」 「お前がいくら親友でも、イケメンでも、オレはお前を養う気はまったくない」 「じゃあ、オレが養ってやろっか?」 「それこそ本末転倒だろーが」 ……残念そうに頬を膨らませる佐藤に頭痛がしてきた。 実際、佐藤はオレから見ても、かなりのイケメンだと思う。 一見チャラチャラしてるけど、男気はあるし、器用だし、フェミニストだし、歩いていているだけであちこちで黄色い声が上がるし………。 まぁ、何より周りがつけるオレとの待遇の差の激しさが色々と物語っている。 しかし、だ。ここに断言しておくが、オレはコイツを羨ましいと思ったことはない。 さらにいえば、女にモテたいと思ったこともなければ、イケメンになりたいと思ったこともない(モテるが故に要らぬトラブルに巻き込まれている姿をイヤというほど見ているからだ)。 自分らしくイチズに生きるのが一番。
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