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「お前、無意識かもしんねーけど
時々敬語になってんぞ?
おかしくね?‥‥同級生なのに」
「‥‥‥だけど‥‥タメ口は」
「昨日、興奮して俺に質問攻めしてる時は
タメ口だったぜ?
やれば出来んじゃん」
「‥‥‥は‥ぃ‥」
「よし!契約成立な!?
これから宜しく!」
桜並木のど真ん中
暖かい春の風が二人を包む。
まるでワルツを踊るように
花びらが舞い上がった。
笑顔で右手を差し出す彼を
(綺麗だ)と見入ってしまう私の手を
その人は強引に握った。
「これからは俺の事、心って呼べよ?
俺はお前を優奈って呼ぶから」
こんな形で男の子に手を握られる事も
苗字以外で呼ばれる事も初めてで
思わずその姿勢のままフリーズしてしてしまう。
「おい!遅刻!急げって!」
呆然としている私を置いて、いつの間にやら門の近くで私に手招きしてる松田君。
踵を蹴り小走りで彼に走り寄った。
校門に続く桜並木
背中に優しい風を感じながら、松田と門をくぐる。
───‥‥春は期待と不安が交差する
‥‥‥不思議な季節。
私達はもう既にこの日から
単なる同級生
単なる隣人では無くなった。
秘密を共有する協力者。
相手の為に‥‥
自分の為に‥‥
利用するわけじゃない。
これはちゃんとした契約だ。
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