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そっとドアを少し開けてみると、光が廊下に洩れてくる。
──‥‥なんだ、起きてる?
「ねぇ、宿題一緒にしな‥‥」
引き戸を開けながら
そう言い掛けて止めた。
彼は電気を点けたまま
布団に入りうつ伏せでノートを開き
片手にペンシルを持つ体制で寝ていた。
忍び足でノートを覗き見ると
宿題の途中だったらしい。
しゃがんで寝顔を見ると
普段の生意気な雰囲気とは全く逆で
凄く子供っぽく見えて微笑んでしまう。
取り敢えずペンシルは危ないから
シンの指先から抜いて、ノートも閉じた。
──‥‥極端だなぁ~。
夜更かしするのは、小説執筆の時だけ。
基本的に良く寝てる。
思わず、溜め息‥‥
ねぇ、シン?
私って色気、無いのかな?
普通はさ?
こんな親不在で二人っきりなら
ちょっと甘い雰囲気になったり、しない?
‥‥いつかの
図書室みたいに‥‥
スー‥‥っと安定した寝息
危機感ゼロの幸せそうな表情
頬を触ってみたくて
手を差し出すけれど
一歩手前で空中を掴む。
──‥‥ヘタレ
自分にそう言いながら
彼の横に寝転びながら宿題を始めた。
お母さんかお婆ちゃんが居るのが、日常に居るのが当たり前で
不在となると少し心細い
──‥‥宿題終わったら、帰るから。
少しだけ、ここに居させてね?
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