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───‥‥一年前
「かったりー!!」
「シン!男の子じゃろ!?根性見せぇ」
「ぅぅ~‥‥」
俺は松田心。
この町の冴えない小さな本屋の孫。
只今、爺さんに出版社から届いた雑誌を陳列している。
「あぁ‥‥、爺にはキツいのぉ。
シン!後は任せた!」
「っはぁ~!?ジジィ!!待てよ」
後ろを振り向いた時には、既にヒラヒラ振られた手しか見えなかった。
「ハァ~」
深い溜め息を付きながら、取り敢えず目の前の仕事をこなしていった。
俺には両親が居ない。
事故で二人とも逝ってしまった。
親が居ない事を悲劇に思った事も無い。
だって、物心付いた時からもう居なかったし‥‥。
新刊の入ったダンボールを開けると、真新しい紙とインクの香りが鼻を掠めた。
思わず瞼を閉じ、思いっ切り吸ってみる。
俺はこの香りが大好きだ。
今の時代は電子書籍なんて言ってる奴もいるけど‥‥
機械相手じゃ、情報は一緒でもこの独特な香りまで楽しめねーだろ?
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