2045/05/10 メインダンジョン第一階層フロアボスルーム突入間際

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 ――それを目にして、叫び声をあげたのは誰だったのか。  彼かもしれないし、彼女かもしれないし、あるいは自分かもしれなかった。  だがその光景が、この場の誰にとっても絶望的なものであることだけは確かだった。  消えていく。  光になって消えていく。  あの人の身体が、心が、失われていく。  知らず、手をのばした。  そうすれば、なくなっていくなにかを掴み取れる気がしたのかもしれない。  けれど、指先は届かなかった。  なににも、触れることなく、あの人の全ては世界に溶けていってしまった。 「あぁ……ああああ、ああぁぁぁぁぁ」  引きつった喉から、声が漏れでた。  自分のものとも思えない、酷く、情けない呻き声。  のろのろと視線をあげる。  そこにそれはいる。  身の丈を優に超える、山のような巨体。  緑色の肌をした、赤い眼の化け物。  錆びた鎧に錆びた兜に錆びた剣。  赤錆にまみれた、このフロアのボスモンスター。  ――《忘失された名も無き子鬼族の英雄》。 「おまえが……おまえがぁッ……! おまえがぁぁァァァァァァ!」  化け物は何も答えず、ただ無言でその剣を振るうだけだった。
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