18.かの地へ

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ブラッドリーの剣を受け止め、ボースは予想外の重みについ感心する。 「結構腕が立つじゃねえか」 「お前に誉められても嬉しくはない・・・な!!」 幾度となく剣を交えているうちに、ボースは奇妙な既視感を覚えた。 剣の速度。 身のこなし。 柄の握り方まで。 (これは―) ボースはにやっと笑った。 「気づいてるか?あんたの太刀筋、隊長にそっくりだぜ」 その言葉に、ブラッドリーのポーカーフェイスが、崩れた。 彼がボースに斬りかかろうとした瞬間。 「うわぁぁぁっ!!」 リリーのいる陣にいた隊員達が、軒並み何者かに吹っ飛ばされてきた。 (―何だ!?) 事態が変わったことで、ブラッドリーは冷静さを取り戻す。 「ひとまず休戦だ!!じゃあな」 いち早く剣を収め、駆け出したボースの後を追い、彼は状況を把握すべく走った。 ボースが中央の陣に戻った時、その場に立っていたのはリチャードとリリーの二人だけだった。 「戻りました!!状況は?」 「レティシアとラヴェンダーは護衛をつけて先に逃がした。ただ…」 言葉に詰まったリチャード王と、周囲に倒れている隊員達を見て、ボースは悟った。 「相当ヤバい奴らが来ましたか」 これ以上リチャード王を、リリー姫を、ついてきてくれた隊員達を危険に晒すわけにはいかない。 隊員達がなんとか起き上がってきたのを見て、ボースは決断した。 「総員、陛下達を連れて撤退しろ!!各々指示通りの場所へ向かえ!!」 敵が一斉に反応する。 ボースは近くに落ちていた槍を手に取った。 「ボース、無茶よ!!」 リリー姫の叫び声が徐々に遠ざかっていく。 (・・・それでいい) 突進してきた5人を、ボースは槍一本で食い止めた。 ジリジリと後ろに押されながらも、なんとか踏みとどまる。 「ここから先は、行かせねえ!!」 いったんは敵をなぎ倒し、攻撃に移ったのだが― (なんだ…こいつらは!?) 自分の攻撃を見切る優れた動体視力と反射神経。 槍で貫かれても倒れない、異常に強靭な肉体。 全く感情のない双眸。 「殺す…邪魔するものは殺す」 うわ言のように呟きながら、ひたすらこちらへ向かってくる相手を見て、さすがのボースも恐怖した。
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