18.かの地へ

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奇妙なことに、敵は一切の動きを止めている。 「やっぱりね。こいつら王族の私相手には攻撃して来ない。たぶん叔父上の指示よ」 だが、何が彼らをここまで駆り立てるのか。 理由がわからないまま放置すれば、今後再び脅威になるだろう。 (虎穴に入らずんばなんとやら…ってね) リリーはボースの耳元でささやいた。 「早く行って・・・兄上に伝えて。何が起きてるのか調べるために私はあえて捕まるから、心配しないでって」 「だめだ…俺も残る」 なおも引き下がろうとしない頑固なボースをリリーは一喝する。 「このまま戦えば死ぬわよ!!命を粗末にしないで、逃げなさい!!」 齢19。若き姫の迫力が ボースを完全に圧倒した。 どうにか馬をつないでいる場所に着いたボースは、やっとの思いで馬上によじ登る。 (なんつー、無茶な姫様なんだ) だが、道理は通っていた。 あのままでは自分は死んでいたし、脅威の芽は早めに摘み取るべきだ。 彼女の思いを無駄にしないために。 ボースは後ろを振り向かず、馬を走らせる。 (頼むから、無事でいてくれよ) ボースは知らなかった。 その時、誰かが発した断末魔の叫びが響き渡っていたことを―
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