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休日を利用し、ウィルセイはポール、ジョーと共にコンキスタの中心街までやって来た。
本当はポールと二人で外出する予定だったのだが、出がけにすっかりウィルセイを"心の友"扱いするようになったジョーが、自分も一緒に行くと強引についてきたのだ。
「ウィル、これとかどうだ。ちょっと身体に当ててみろよ」
すっかり仕切り役になっているジョーが、服を次々に渡してくる。
「ウィルさんのファイトマネー額だったらもう少しいい生地の服買えませんか?」
ポールが首をかしげる。
「いや、気軽に着れる服が買いたかったから、ちょうどいいよ」
「お前、服のバリエーション少ないもんな」
ジョーの遠慮のかけらもない言葉に、ウィルセイは困ったように笑う。
(本当はもう少しあるんだけどな…)
実は近衛隊長時代に使っていた礼服も何枚か持って来たのだが、ここでの生活には役立ちそうもないので棚の奥にしまったままになっている。
見繕った服の数々を購入した後、3人は市場で果物を買い、それをほおばりながら歩いていた。
「ウィルさんて筋肉ついてるのに細身だから、結局何でも似合いましたね」
「まあ俺が見立てた服だからな。カッコいいに決まってる」
いけしゃあしゃあと言ってのけたジョーに、ポールは冷たい視線を浴びせる。
「その押し付けがましいアピールがなければ、本当にお洒落で男前なのに・・・」
二人のやり取りを苦笑しながら見ていたウィルセイだが、すぐ先にわらわらと人垣が出来ているのを見つけ、足を止める。
彼の視線の先にあるものに気づいたポールとジョーも立ち止まった。
「何の騒ぎだ、あれ?」
「行ってみましょう」
ようやく人垣の一番前までたどり着いた3人が目にしたのは一枚の御布令書だった。
『リチャード王失踪につき、宮廷は護国卿ジョンを新たな王として任命した。
なお、リチャード王と失踪に関わったとされる人物の人相書を以下に掲載する。目撃情報があれば護民軍まで』
(ジョン卿が王位に就いただと!?)
しかも、リチャード王の隣にある人相書は明らかにボースのものだ。
ウィルセイの表情が凍りついた。
(一体、何が起きたんだ…)
「ウィル・・・おいウィル!もしもーし!?」
「ウィルさん、大丈夫ですか?」
心配したポールとジョーが声をかける。
だがウィルセイは全く反応せず、しばらくの間、その場に立ち尽くしていた。
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