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ラヴェンダーは別の街で、その御布令書を見つめていた。
外套のフードをかぶり、彼女は急いでその場を後にする。
「ただいま戻りました」
「姫様、おかえりなさい」
ラヴェンダーを出迎えたのは元・近衛隊員達だ。城を脱出した後、一行は護国卿が追手を出すことを警戒し、森林地帯で野営をしながら北へと進んでいた。
「もう少ししたら夕食作りますから。お肉、捕っていただいてます?」
「もちろん、今日も狩っておきました!!」
「姫様の飯、旨いんだよなぁ」
先ほど街へ出掛けたのは夕食の材料を手に入れるためだ。持ち出した金貨をやりくりしながら料理を作るのがラヴェンダーの役割になっている。
一方レティシアは森で薬草を探し、傷を負った元・近衛隊員達の手当てをしている。慣れないテント生活に不平も言わず、彼女もまた自分の役割を果たしていた。
奥へ進むと、リチャードと包帯と添え木だらけの痛々しい姿になっているボースが話し込んでいた。
城から逃亡した夜、彼は重傷を負っていたが、翌日ひたすらに眠った後は、リチャードと相談を重ねながら今後の指針を決めてくれていた。
「お話し中申し訳ありません。少しよろしいですか?街で御布令書を見たのでご報告させていただきたいと思って」
御布令書の内容をそのまま伝えると、二人は腕をくみ考え込んだ。
「そうか・・叔父上は私を失踪扱いにして王位に就いたか」
「で、俺は王を誘拐した犯人扱いですか。とりあえず野営しておいたのは正解でしたね」
「お二人で相談されるのなら、私は夕食の仕度をしますね」
気を遣い笑顔で切り出したラヴェンダーに、リチャードは声をかける。
「もう行って大丈夫ですよ。知らせてくれてありがとう」
隊員達と言葉を交わしながら夕食の仕度をしているラヴェンダーとレティシアの姿を見ていたボースは、感心したように呟いた。
「全く・・・逞しいですね。王妃様も、姫さんも」
「彼女達なりに頑張っているんだろうね。リリーがいない分まで」
何気ないリチャードの言葉に、ボースの表情が曇る。
「申し訳ありません…俺はあの時、姫様を止められなかった」
本来なら、我が身を捨ててでもあの場を死守すべきだった。
どう理由をつけてみても、自分は確かにリリー姫の気迫に負け、説得されたのだ。
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