19.揺らぐもの、揺らがないもの

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ラヴェンダーは別の街で、その御布令書を見つめていた。 外套のフードをかぶり、彼女は急いでその場を後にする。 「ただいま戻りました」 「姫様、おかえりなさい」 ラヴェンダーを出迎えたのは元・近衛隊員達だ。城を脱出した後、一行は護国卿が追手を出すことを警戒し、森林地帯で野営をしながら北へと進んでいた。 「もう少ししたら夕食作りますから。お肉、捕っていただいてます?」 「もちろん、今日も狩っておきました!!」 「姫様の飯、旨いんだよなぁ」 先ほど街へ出掛けたのは夕食の材料を手に入れるためだ。持ち出した金貨をやりくりしながら料理を作るのがラヴェンダーの役割になっている。 一方レティシアは森で薬草を探し、傷を負った元・近衛隊員達の手当てをしている。慣れないテント生活に不平も言わず、彼女もまた自分の役割を果たしていた。 奥へ進むと、リチャードと包帯と添え木だらけの痛々しい姿になっているボースが話し込んでいた。 城から逃亡した夜、彼は重傷を負っていたが、翌日ひたすらに眠った後は、リチャードと相談を重ねながら今後の指針を決めてくれていた。 「お話し中申し訳ありません。少しよろしいですか?街で御布令書を見たのでご報告させていただきたいと思って」 御布令書の内容をそのまま伝えると、二人は腕をくみ考え込んだ。 「そうか・・叔父上は私を失踪扱いにして王位に就いたか」 「で、俺は王を誘拐した犯人扱いですか。とりあえず野営しておいたのは正解でしたね」 「お二人で相談されるのなら、私は夕食の仕度をしますね」 気を遣い笑顔で切り出したラヴェンダーに、リチャードは声をかける。 「もう行って大丈夫ですよ。知らせてくれてありがとう」 隊員達と言葉を交わしながら夕食の仕度をしているラヴェンダーとレティシアの姿を見ていたボースは、感心したように呟いた。 「全く・・・逞しいですね。王妃様も、姫さんも」 「彼女達なりに頑張っているんだろうね。リリーがいない分まで」 何気ないリチャードの言葉に、ボースの表情が曇る。 「申し訳ありません…俺はあの時、姫様を止められなかった」 本来なら、我が身を捨ててでもあの場を死守すべきだった。 どう理由をつけてみても、自分は確かにリリー姫の気迫に負け、説得されたのだ。
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