20.ここにいる理由

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団体戦の予行演習中も、ウィルセイは今朝の悪夢を払拭しようと必死だった。 台本通りに攻撃と防御を繰り返すうち、ブラッドリーとの思い出が脳裏に浮かんでくる。 二人で稽古にいそしんだ日々。 ブラッドリーの笑顔。 (消えろ…) もうあの頃には戻れないとわかっているのに。 (消えろ!!) 『それでも俺と戦えないお前の甘さが、皆を犠牲にするんだよ』 見たくなければ、目を瞑ればいい。 聞きたくなければ、耳を塞げばいい。 何としてでも、戦わなければ― (何やってやがる!!) エドは舌打ちした。 今のウィルは、見ていて痛々しい。 仲間達と真剣勝負するのが楽しい。 練習を重ね、出来ることが増えていくのが嬉しい。 普段の彼から伝わっていたはずの、そんな純粋な感情が欠片も感じられない。 「演習をやめろ!!」 エドは大声で予行演習を止め、フィールド内に入っていった。 「ウィル、今日の戦闘は出場停止だ。今すぐ演習から抜けろ。俺が代わりに入る」 有無を言わせぬエドの口調に、周囲の戦士達はみな沈黙している。 今は何としてでも戦いたい。 戦っていれば、忘れられる気がする。 考えたくないことを、全て。 「お願いです、外さないで下さい!今は一戦でも多く戦いたいんです」 なおも食い下がるウィルセイを、エドは一喝した。 「辛気くさい顔して戦って、お客様を楽しませられると思うか!?俺たちは戦いで観客を楽しませるプロだぞ。今の自分の表情を鏡で見てみろ!!」 エドの指摘に、ウィルセイはハッとする。 感情ばかりに目を向けて、今の今まで戦士(ファイター)としての心得をすっかり失念していた。 そんな自分が恥ずかしく思えて、彼は押し黙ってしまった。 エドはぽん、とウィルセイの肩を叩き、耳許で囁く。 「個人の感情を闘技場に持ち込むな。頭を冷やしてこい」 厳しい言葉の裏にある、エドの思いやりが伝わってきて。 ウィルセイは素直な気持ちで頷き、フィールドから出ていった。
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