21.謀議

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コンキスタ護民軍の拠点となっているルゴス城では、今日も穏やかな時間が流れていた。 入り口付近の警護に就く兵士二人も、のんびりと談笑している。 「青い空、白い雲、見渡す限り実り豊かな畑!ここは今日も平和だな」 「そうだな。王様が失踪して代わったり、ボースさん指名手配になったりとか、嘘みたいだよな」 北方の護民軍から王都近衛隊に引き抜かれたボースは、コンキスタの護民軍でも有名人だ。 加えてここの軍団長は、ボースと同時期に護民軍に入った仲である。 「まだひとっつも情報来てないんだろ」 「軍団長どうすんのかねえ」 その時、二人の前に大きな人影が現れた。 「おい、ちょっといいか」 腕組みをして立っている大柄な男性。 角刈り頭に、広い肩幅。 二人はその人物を指さし、声を揃えて言った。 「あ、指名手配犯がいる」 兵士の一人はあっさりと言った。 「ボースさん、何やらかしたんすか?」 もう一人も全く動じない。 「近衛隊クビになったんすか!?」 ボースはこめかみを指で押さえた。 「お前ら、気にする所間違ってないか・・・」 二人は揃って首を傾げる。 「はあ?」 ボースとしては精一杯ボリュームを抑えた声でツッコミを入れる。 「やっといてなんだが、俺が易々とここに忍び込んでることを気にしろ!!」 「いやー、軍団長とお知り合いだから裏の経路知ってるのかなあと」 (ツッコミ入れるのも面倒になってきた…) がくっと肩を落としたボースの背を、彼の後についてきた人物が慰めるように叩く。 その顔は外套のフードに隠れて見えない。 気を取り直しボースは姿勢を正した。 「ガウェインに会わせてくれないか?連れと一緒に」 謁見の間に通されたボース達を、細面の男性が出迎える。 鋭い目付きに無精ひげ、一見ガラが悪そうだが、にこやかな笑顔を見せた途端、印象が変わった。 「よおボース!!指名手配のくせに堂々とした出戻りじゃねえか。俺じゃなかったら王都の連中に引き渡されてんぞ」 「お前の方がよっぽど悪人面してんのに、世の中おかしいよなあ。ガウェイン」 久々に再会したボースとガウェインは嬉しそうに抱擁を交わす。
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