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「で、そちらのお連れさんはどこのどいつ…」
フードをとった人物の姿を見て、ガウェインは固まった。
(深紅の髪、翡翠色の瞳…こいつ…じゃなくてこの御方は…)
散々口をパクパクさせた後、彼はボースの顔を見て、ようやく言葉を発した。
「なにが、どーなってんだよ!?」
(まあ、無理もねえよな…)
ガウェインが珍しく混乱状態に陥っているのを見て、ボースは苦笑した。
「俺らが忠誠を誓った真の王だ。長い話になるけど付き合ってくれや」
「なるほど、元護国卿にはめられて逃亡してきたわけか」
ここに来るまでの経緯を二人から聞いたガウェインが話をまとめる。
「ついでに言うとリチャード様の妹姫はあえて捕われの身に、俺は薄気味悪い兵士どもにボッコボコにされた」
「お前がボッコボコにされるとは珍しい事もあるもんだ」
おかしそうに笑った後、ガウェインは続けた。
「・・・で、なぜリチャード様はわざわざここを訪ねて下さったんです?」
ガウェインの目をまっすぐ見つめ、リチャードは言葉を発した。
「私に力を貸してほしい」
「ええと…なんで俺らなんかに!?言っちゃなんだがここの護民軍はあなたが即位するまでカス扱い、王都からも見捨てられかけてたんですよ」
明らかに解せないという表情をしているガウェインに対し、リチャードはなおも続けた。
「貴方も聞いているでしょう?マイカ王国の不穏な噂を」
「領土拡大を狙って軍備を増強してるって噂ですね」
リチャードは頷く。
「あくまで私の推測だが、叔父はマイカ王国と手を組むと思う」
話を聞いているガウェインの姿勢が、だんだんと前のめりになってきていた。
「まさか…ここに攻めてくるとでも言うんですか?」
「私を抹殺するためにな。交換条件として何らかの形でマイカ王国の侵略戦争に手を貸すだろう。民の意思など関係なく」
リチャードの眼差しは真剣だった。
「勝手な願いだとはわかっている。だが私一人では、民もこの国の平和も護れない。せめて10年前の二の舞を避けるために、策を講じておきたいのだ」
ガウェインはしばし答えを迷った。
もしもリチャード達を受け入れれば、いずれ否応なしに戦に巻き込まれる可能性が高い。
10年前の戦を経験しているからこそ、平和な生活を望む民は多いはずだ。
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