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ルゴス城内の一室で、ラヴェンダーが心配そうにレティシアに話しかけていた。
「レティシア様、お加減はいかがですか?」
コンキスタに来るまで無理をしていたのか、ルゴス城に到着した翌日からレティシアは体調を崩していた。
「おかげで大分楽になったわ」
"むさ苦しい所ですみませんが、ゆっくりおやすみ下さい"
軍団長の温かい気遣いに、気が緩んだのかも知れない。
微熱で身体がだるく、ラヴェンダーにも随分心配をかけてしまっている。
だが、今日は彼女に遠慮なく外出してもらいたい。
なぜなら―
「今日は彼に会える日でしょう?早く準備しないと」
今日は軍団長、リチャード、ボースの3名がコンキスタの闘技場に"視察"に行く。
リチャードの計らいで、ラヴェンダーも同行する予定なのだ。
「でも・・・」
ルゴス城に来てから、二人を世話してくれているガウェインの妻が口を挟む。
「ラヴェンダーさん、レティシア様にはアタシがついてるから。あんたのいい人に会うんだろ。目一杯キレイにしといで」
レティシアは蒼い瞳でラヴェンダーを見つめ、ふわりと微笑んだ。
「私のことは気にせず行ってらっしゃいな」
二人の気持ちに感謝しながら、ラヴェンダーは言った。
「ありがとうございます。行ってきます」
ガウェインの案内で3人は闘技場へやって来た。
もちろん正体が露見しないようリチャードとボースは外套のフードを目深にかぶっている。
長い黒髪を桃色のリボンでひとつに束ねたラヴェンダーは、来客層を見て目を丸くした。
「結構女性の方もいらっしゃるんですね。驚きました」
楽しげな雰囲気に、ボースも小声で付け加える。
「俺が知ってる闘技場とは随分違いますよ」
その時、4人の横を通り抜けていく女性二人組の話が聞こえてきた。
「こないだウィル様目当てで来たのに、欠場してたの」
「今日は出場してくれるといいわね」
ガウェインの頭に、一度会ったことがある元・近衛隊長の容姿が浮かぶ。
「さすが男前。いつでもどこでもモテ…」
(ガウェイン…姫さんの前だぞ!!)
フードの陰から注がれるボースの冷たい視線で、彼はようやく自分の失言に気づいた。
彼はラヴェンダーの方を向いて、小さく頭を下げる。
「すんません」
ラヴェンダーは首を横に振り、困ったように微笑んだ。
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