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4人は護民軍高官が"視察"に来た時にしか使えない特別席へ入った。
闘技場の一番上にあり、周囲から視界が遮られているため、ここならばリチャードとボースも存分に話せるとガウェインが判断したのだ。
「随分賑わってますね」
リチャードは呟いた。
司会進行を務めるのは、茶色の髪の美少年。
戦闘は徹底的にショーアップされており、観客が存分に楽しんでいるのが伝わってくる。
「俺も初めて視察に来た時は驚きましたよ。ここは闘技場としては珍しく血生臭いこと一切禁止ですから、観客も安心して楽しめるんでしょうね」
そう言ったガウェインに向かってボースが話しかける。
「女も男も、強い戦士が多いな。さっきの赤毛の美女とツンツン頭の一戦は見応えあったぜ」
今日は男女混合で戦闘が行われている。先ほどの戦闘は、体格差をものともせず、赤毛の美女が勝利し会場を盛り上げた。
(ツンツン頭の青年も相当強かったが、ボースから見ると、いかんせん集中力を欠いていたのかツメが甘かった)
「だろ?スカウトしたい人材はたくさんいるから、余計に断られるのが痛いんだよ」
「皆さん、そろそろウィルセイの戦闘ですよ」
リチャードの言葉で、3人の視線は一斉にフィールドに注がれた。
司会を務める少年の、張りのある声が響く。
「さあさあ皆さま、お待たせいたしました!!本日の特別試合です」
「まず東の登場口から出てきますは、デビュー戦からわずかひと月で人気ファイターの仲間入りしたこの男。美形な上にめっぽう強い!"神速の貴公子"ウィル!!」
ウィルセイが登場口から出てきた途端、大歓声が闘技場内に響き渡った。
("神速の貴公子"…!くぅ~、早く隊長いじりてえっ!!)
ボースは危うく吹き出しそうになるのをどうにかこらえ。
(本人はさぞ抵抗しただろうな)
リチャードは真顔のまま、心の中で呟き。
「きゃーっ、ウィル様ぁ~!」
「今日もすてき~!」
(女性の声援の方が多いのね)
ラヴェンダーは、ほんの少しムッとして。
(すげえ・・・男前ってすげえ!!)
ガウェインに至っては、よくわからない感心の仕方をしていた。
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