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「続いて西の登場口にご注目!!この闘技場のリーダーが久方ぶりに登場です。この試合、ファンなら絶対に見逃さないで下さい!ご紹介しましょう…"コンキスタの狼"エド!!」
焦げ茶色の髪を束ねた男が登場口から出てきた瞬間、闘技場内にウィルセイの登場時を遥かに凌ぐ、割れんばかりの歓声が響き渡った。
「まさかご本人が出てくるとはな。リチャード様、彼がエドマンドです」
ガウェインの言葉に頷き、リチャードはフィールドに視線を戻した。
「それでは、戦闘開始!!」
(強い・・・)
ウィルセイと互角以上の戦闘を見せる実力の持ち主。
"護民軍史上最強の兵士長"という異名もうなずける。
もしも彼と戦士達が味方についてくれたら、どんなに心強いだろう。
(そう簡単には行かないだろうな)
彼が頑なに"視察"を拒絶するのには、必ず理由があるはずだ。
まずは直接顔を見て、話し合ってみようとリチャードは心に決めた。
戦闘終了後、直接戦士達の控え室にやって来たガウェインを見て、エドは心の中でため息をついた。
(懲りない奴だな)
彼が軍団長に就任してからも幾度か手厳しく追い返したので、いい加減諦めたかと思ったのだが。
「よお、また来たぜ」
ガウェインの陽気な挨拶をエドは冷ややかに受け流す。
「何度来ても答えは同じだぞ」
ガウェインは全く意に介せず続けた。
「あんた達と直接話したいって御方を連れてきてる。一度話してくれや」
ガウェインの背後から、リチャードとボース、さらにボースの陰に隠れるようにしてラヴェンダーが現れた瞬間、控え室にいる戦士達がざわついた。
「おい、あれ…」
ジョーとポールは互いに顔を見合わせた。
「行方不明の王様に大男に美人って・・・すごい組み合わせですよね」
大男の横に立っている黒髪の清楚な美女を見て、エドはピンと来た。
"私には想う相手がいる"
王がわざわざここへ伴って来たことを考慮すれば、あのペンダントを贈ったのは―
「そちらのお嬢さんは…ウィルに用かな?」
自分に話題が振られるとは思っていなかったラヴェンダーはしどろもどろになりながら答えた。
「えっ!?ええと…はい」
「おいウィル!」
汗を流し、着替えを終えたウィルセイが控え室の奥から出てきた。
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