22.再会

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「何ですか…」 3人の姿をようやく認識し、彼は一瞬何が起こっているのかわからない、という表情を浮かべる。 だが、なんとか動揺を抑えたらしい。 すぐに表情を引き締めた。 「リチャード様、よくぞご無事で・・・」 かしこまるウィルセイを前に、リチャードは悠然と微笑んだ。 「ウィルセイ、元気そうだな」 続いてウィルセイと目があったボースはニカッと笑った。 「よお、隊長」 「相変わらずだな、ボース」 そしてその隣には― (ラヴェンダー…) いつものように控えめに微笑む彼女。 可愛らしい桃色のリボンが、可憐さを引き立てている。 本当は触れたくて仕方がなかったが、さすがに仲間達の前ではまずい。 見つめあったまま動こうとしない二人を見て、気をきかせたエドが言った。 「ここじゃなんだから、そちらのご婦人と二人で外に行ってこい」 二人が出ていった途端に、エドはパタパタと手で自分を扇いだ。 「あー、お熱いこった。涼しくなってせいせいしたぜ!!」 リチャードはその仕草を照れ隠しと解釈した。 「理由はわからないが気を遣ってくれたのだろう?二人に代わって礼を言う」 エドはプイッと横を向いた。 「俺は馬に蹴られて死にたくなかっただけだ」 次の瞬間、リチャードの方を向いた彼は厳しい表情に戻っていた。 「それより、俺たちに話したいことがあるんだろ。ここにいる全員で聞いてやるよ」 控え室に集合した戦士達にリチャードは懸命に語りかけた。 王都を出てコンキスタに来た経緯。 この国に内と外から迫る脅威について。 そして10年前の悲劇を繰り返さないために、力を貸して欲しいと― だが、エドはきっぱりと言った。 「断る」 「エドさん!?」 不満そうなジョーをエドは視線だけで黙らせる。 「ウィルは元々そちら側にいた人間だ。あなたの下に戻るのを止める気はない。だが俺たちは違う」 10年前、戦っても戦っても王都からの援軍は来なかった。 戦火の中で、壊された平穏な暮らし。 街のあちこちで、かつて小さな家があった筈の場所に、瓦礫と焦げた木々が積み重なっていった。 今も忘れられない。 あの日壊れたはずの世界が、変わらず残酷なまでに美しかったことを― エドはリチャードに背を向けた。 「あんたらの戦争に、俺たちを巻き込むな。・・・今日はもう、話したくない。二人が戻ったら帰ってくれ」
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