22.再会

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闘技場を出てからずっと、ラヴェンダーはウィルセイの後について黙々と歩いていた。 ずっと会いたくてたまらなかったはずなのに、いざとなるといつも何も言えなくなる。 「あのっ・・・」 ひたすら続く沈黙に耐えきれず、ラヴェンダーが話しかけようとしたその時、ウィルセイが唐突に足を止めた。 「着いたよ」 目の前に広がる美しい景色に、ラヴェンダーは息を飲む。 茜色の夕陽に染まる小さな白い花々。 ディアマンテ王国固有種である、水晶花の群生地だった。 ウィルセイは穏やかに微笑む。 「仲間達と出かけた時に見つけたんだよ。いつか貴女にも見せたいと思っていた」 無数の花々が風に揺れる。 「綺麗…」 この美しさは摘み取られた水晶花では伝わらない。 そのままの景色を自分に見せてくれた彼の心が胸に染みる。 王宮で働いていた頃のようにすっかり荒れてしまった手を、ウィルセイはいとおしむように握った。 「…無事で、良かった」 少し言葉が足りないけれど、温かくて優しい、いつものウィルセイだった。 無造作に開いている襟元には、ラピスラズリのペンダントが揺れている。 ようやく彼に会えたのだという実感で、ラヴェンダーの張りつめていた緊張の糸が切れた。 ぽろぽろとこぼれ落ちる涙を、ウィルセイは掌でそっと拭い、無言のままラヴェンダーの身体を抱き寄せる。 なぜこんなにもほっとするのだろう。 落ち着く先は見つけたが、自分達が逃亡者であることには変わりがない。 護国卿の側についたブラッドリー。 囚われの身になっているリリー姫。 まだ何も解決したわけではないのに、自分はこうして彼の温かさに包まれている。 そのことがどこか後ろめたくて、ラヴェンダーの胸は締め付けられるように痛んだ。
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