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ウィルセイの温かさに包まれ、ラヴェンダーの涙はいつの間にか止まっていた。
たくましく力強い、けれど優しい抱擁。
彼の鼓動が伝わってくる。
想いが通じあったとはいえ、彼にふさわしい女性と認められるにはまだ時間がかかるだろう。
それでも。
「ウィルセイ様…」
(―好き)
その気持ちが全てだった。
ウィルセイが軽くため息をつき、ポツリと呟いた。
「出来れば"様"は外してくれないか」
顔を上げて見れば、彼の視線は照れ臭そうにあさっての方向をさ迷っている。
「名前で呼んで欲しい。昔みたいに」
ラヴェンダーはクスッと笑う。
「ウィルセイ」
ラヴェンダーの柔らかな笑顔に、ウィルセイの自制心が緩んだ。
自然な欲求に身を任せ、彼女の桜色の唇に自分の唇を重ねる。
初めての口づけを交わしたこの夜。
二人は明るい未来へ向かって共に歩みだしたのだと、そう信じて疑わなかった。
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