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ひとしきり笑いあった後、ラヴェンダーはさりげなく切り出した。
「お話って、結婚のことですか?」
「聞いていたのか?」
思わず聞き返したウィルセイに対して、ラヴェンダーはこくん、と頷く。
「ええ、レティシア様から」
「私はリチャード様からだ」
街灯りに視線を向け、ウィルセイは続けた。
「言われてから色々考えた。自分の意思で決めるべきことだから」
自分の心に訊いてわかったことは―
本当に結婚の許しを得たかったのは、この場にいないただ一人だということ。
"悔いのないよう、自分で決めろ"
(ブラッドリー…)
今は遥か遠い空の下にいる、親しい友。
いつか戦う日が来た時、彼の意思を受け止められるように。
何度諦めようとしても、諦めきれなかった彼女への想いに、自分なりのけじめをつけたいと思った。
「ラヴェンダー…私と結婚してくれないか」
ウィルセイと結婚して、二人で家庭を築く。
一度は諦めた夢が、叶おうとしている今、ラヴェンダーの脳裏には何故かブラッドリーの姿が浮かんだ。
(ブラッドリー様…)
大切な友人を傷つけてしまっても。
何度ウィルセイと引き離されても。
この想いは捨てきれなかった。
「・・・はい」
二人の手で、未来をつかみとる。今度こそ。
ウィルセイは背後からラヴェンダーを抱き締める。ラヴェンダーは自分を抱く彼の腕にそっと手を添えた。
"愛してる"
何度言葉にしても足りない。
伝えきれない想いで胸がいっぱいになる。
二人はしばらく無言のまま、寄り添って街の灯りを見つめていた―
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