26.誓約

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一方、花嫁のエスコート役を務めるボースは、少々落ち着かない感じで襟元をいじっていた。 「ボースさん…お待たせしました」 振り向くとそこにはドレス姿のラヴェンダーが立っていた。 光沢のあるオフホワイトの生地で作られた長袖のドレス。裾回りは細かい刺繍で彩られている。 王宮で着ていたような、豪奢なドレスでなくとも、編み込んだ黒髪を飾るのが花冠だけであっても、輝くような美しさだと、ボースは素直に思った。 「行きましょう。隊長のところへ」 ラヴェンダーは柔らかな微笑みを浮かべ、ボースの手をとった。 ―礼拝堂へ続く扉が開かれた。 ボースと共に一歩一歩、祭壇へ進んでくるラヴェンダーの姿を見ながら、ウィルセイの中でさまざまな想いが去来する。 幼い頃は、ずっと3人一緒だった。 ずっと笑って、同じ道を走っていけるのだと信じていた。 忠誠心では抑えられない情熱が、自分の中にあることを知るまでは。 唯一無二の友を失い。 身分も失い、やって来た北の地。 新たな仲間達との出会い。 たくさんの人がくれた優しさがなければ、こうして彼女と結ばれる日は来なかっただろう。 だからこそ、その気持ちに応えられるように、真摯に今を生きようと、彼は心に誓った。 穏やかな微笑みを浮かべ、ウィルセイはラヴェンダーに手を差し出す。 そして手を繋いだ二人は、祭壇で待つリチャードの前にひざまづいた。 終始厳粛な雰囲気で行われた式とは一転して、祝いの宴は飲めや歌えやの大騒ぎ。 この先大きな戦が待っているとわかっているからこそ、誰もがつかの間の休息を心から楽しんでいた。 「うぉっしゃー!踊るぞお前らぁ!!」 ほろ酔いのジョーが杯を掲げ叫ぶと、戦士達が楽器を持ち出した。 歌い手のかけ声と共に、笛と太鼓の旋律が流れ出す。 元・近衛隊員も、護民軍も、戦士も、全員が一丸となり手拍子の輪が広がっていく。image=505087811.jpg
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