37人が本棚に入れています
本棚に追加
/196ページ
一方、花嫁のエスコート役を務めるボースは、少々落ち着かない感じで襟元をいじっていた。
「ボースさん…お待たせしました」
振り向くとそこにはドレス姿のラヴェンダーが立っていた。
光沢のあるオフホワイトの生地で作られた長袖のドレス。裾回りは細かい刺繍で彩られている。
王宮で着ていたような、豪奢なドレスでなくとも、編み込んだ黒髪を飾るのが花冠だけであっても、輝くような美しさだと、ボースは素直に思った。
「行きましょう。隊長のところへ」
ラヴェンダーは柔らかな微笑みを浮かべ、ボースの手をとった。
―礼拝堂へ続く扉が開かれた。
ボースと共に一歩一歩、祭壇へ進んでくるラヴェンダーの姿を見ながら、ウィルセイの中でさまざまな想いが去来する。
幼い頃は、ずっと3人一緒だった。
ずっと笑って、同じ道を走っていけるのだと信じていた。
忠誠心では抑えられない情熱が、自分の中にあることを知るまでは。
唯一無二の友を失い。
身分も失い、やって来た北の地。
新たな仲間達との出会い。
たくさんの人がくれた優しさがなければ、こうして彼女と結ばれる日は来なかっただろう。
だからこそ、その気持ちに応えられるように、真摯に今を生きようと、彼は心に誓った。
穏やかな微笑みを浮かべ、ウィルセイはラヴェンダーに手を差し出す。
そして手を繋いだ二人は、祭壇で待つリチャードの前にひざまづいた。
終始厳粛な雰囲気で行われた式とは一転して、祝いの宴は飲めや歌えやの大騒ぎ。
この先大きな戦が待っているとわかっているからこそ、誰もがつかの間の休息を心から楽しんでいた。
「うぉっしゃー!踊るぞお前らぁ!!」
ほろ酔いのジョーが杯を掲げ叫ぶと、戦士達が楽器を持ち出した。
歌い手のかけ声と共に、笛と太鼓の旋律が流れ出す。
元・近衛隊員も、護民軍も、戦士も、全員が一丸となり手拍子の輪が広がっていく。![image=505087811.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/505087811.jpg?width=800&format=jpg)
![image=505087811.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/505087811.jpg?width=800&format=jpg)
最初のコメントを投稿しよう!