26.誓約

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「来ちゃったのはいいけど…踊れる自信がないわ」 ラヴェンダーは戸惑いの笑みを浮かべる。 王都で行われる祭りの踊りに似ているが、見よう見まねであの複雑なステップを踏む自信はない。 だが、そんなラヴェンダーの不安を吹き飛ばすように、ウィルセイは彼女の耳許で囁いた。 「大丈夫、何も考えず楽しめばいい」 ラヴェンダーの腰を左腕で引き寄せ、右手を組んだ状態で、ウィルセイは更にテンポを上げたメロディーに乗り、踊りだした。 ラヴェンダーは最初のうちウィルセイについていくので精一杯だったが、次第に身体が曲のリズムに慣れてくる。 手拍子が鳴り響く。 ウィルセイは一旦彼女の手を離し、先ほどよりもかなり速度を上げて、複雑なステップを踊りきる。 ラヴェンダーは茶目っ気のある笑顔でそれに応え、メロディーに合わせて即興のステップを踏んでみせた。 「よっ、お二人さん!!」 「イェーッ!!」 いい案配に酔っぱらった者達から大きな歓声が上がる。 肩を組み杯を酌み交わす者。 踊る者。 その様子を眺める者。 この場に集った全員が、幸せそうな表情で笑っている。 そして皆の中心で、ウィルセイとラヴェンダーは笑い声を上げ、二人手をつなぎ踊り続けた― 夜もふけて、ウィルセイとラヴェンダー、レティシアは先に退出した。 周囲が、へべれけに酔っぱらいながら、更に飲み続ける者と、帰り支度をし始める者に分かれる中で、リチャード、ボース、エド、ガウェインの4人は同じテーブルを囲んでいた。 「リチャード様、明日の打ち合わせは午後からでよろしかったですか?」 「ああ、よろしく頼む」 「・・・ちなみに、隊長は?」 「明日、ウィルセイには休みを与えた。リリーの奪還に向けて策を練らなければいけないことはわかっているが…せめて一日でも二人きりの時間を持たせてやりたい」 ―穏やかな時間を、せめてもう少しだけ。 そう願いながら、4人は静かに酒を味わった。
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