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ついにジョン卿と側室選びについて相談する日が来た。
話し合うにあたって、ブラッドリーはラヴェンダーを側室候補として推薦することを決断した。
身分は家名を譲り受けた現当主を動かせばどうとでも出来る。
家柄も貴族間のパワーバランスを崩さない程度でちょうど良い。
何より彼女ならきっと国王、王妃に心から仕えてくれる。そう信じているのは事実だ。
だが、ブラッドリーは自分の中にある暗い本音にも気づいていた。
"ウィルセイとラヴェンダーが結ばれるところを見たくない"
二人の幸せな姿を直視すれば、きっと自分の中の醜い感情が溢れだす。
決して叶わない想いならば。
いっそ彼女を引き離したい。
親友から、そして自分からも。
決して手の届かない場所へと―
ジョン卿は手元にある側室候補の名前が並んだ羊皮紙を眺めていた。
いずれもほどほどの身分の女性が並ぶ中、ひときわ目を引いたのはブラッドリーが推薦してきた元・貴族の娘だった。
(幼なじみで人柄は確か、身分は何とか出来ると言っていたが…それだけなのか?)
あのブラッドリーが何の根拠もなく選ぶはずはないが、常識から外れた選択の理由にジョン卿は興味を持った。
その時、暗闇からふっと人影が現れた。
「何かご用ですか?」
立っていたのは、ジョン卿の腹心の部下だ。今は行政府内で要職につかせているが、元は自分の下で長く諜報活動に従事しており、こういう調べものにはうってつけの人物だった。
「頼みがある。至急この女性について調べて欲しい。調査結果は2週間以内に」
闇の中で銀縁の眼鏡がキラリと光る。
「かしこまりました」
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