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ボースとガウェインは城の廊下を並んで歩いていた。
戦場に出れば、ボースは最前線の歩兵隊に。
ガウェインは歩兵隊を援護する弓兵隊に分かれることになる。
「ボース・・・びびってんじゃねえか」
「誰がびびるか。お前じゃあるまいし」
出陣前だが、二人はあえて普段通り軽口をたたく。
「おっさんの本気、見せてやろうぜ!」
そう言ったガウェインの肩に手を置いて、ボースは答えた。
「おうよ!」
ポールは窓から城の中庭を眺めていた。
中庭には、紺色と濃緑色の軍服を着用した兵士達が集まり出していた。
(僕も戦いたかったな…)
"お前らには大事な仕事を任せたい"
あえてエドがここに自分達を残したのはわかっていても、置いてきぼりにされたような気分だった。
「戦列に加わりたかったですか?」
そんなポールの様子を見て、タンザナイト卿が声をかける。
ポールは慌てて頭を下げた。
「・・・手を止めてすみません!」
タンザナイト卿は優しくポールを諭す。
「今の私たちの戦場はここですよ。解毒薬の開発に成功すれば多くの兵士達が救われる。味方も敵も」
(だからこの人はここまで頑張れるんだ)
解毒薬作りに着手して以降、タンザナイト卿はほとんど不眠不休で作業を進めている。
何度も実験と失敗を繰り返し、それでも諦めないのは、人を救いたいという強い意志があるからだ。
「我々は我々の役割を果たしましょう」
タンザナイト卿は、エドやウィルとは違う強さを持っている。
ポールはようやく、自分が今していることに意義を見いだした。
「・・・はい!!」
中庭で、兵士達は歩兵隊と弓兵隊に分かれて整列した。
そして最前列には、歩兵隊の指揮を担当するウィルセイ、エド、ボース、そして弓兵隊を指揮するリリー、ガウェインが並んだ。
リリーは、隣にいるボースの顔を覗きこみ、話しかけた。
「ボース・・・出陣前に、言っておきたいことがあって…あの・・・こないだは、ありがと」
「えらく弱気ですねえ、珍しい」
「失礼な!!お互い必ず生きて帰るわよ」
(良かった。通常運転じゃねえか)
すかさず言い返したリリーを見て、ボースは微笑む。
「当然でしょう。姫様に助けてもらった生命、無駄にはしないっす」
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