29.開戦

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ボースとガウェインは城の廊下を並んで歩いていた。 戦場に出れば、ボースは最前線の歩兵隊に。 ガウェインは歩兵隊を援護する弓兵隊に分かれることになる。 「ボース・・・びびってんじゃねえか」 「誰がびびるか。お前じゃあるまいし」 出陣前だが、二人はあえて普段通り軽口をたたく。 「おっさんの本気、見せてやろうぜ!」 そう言ったガウェインの肩に手を置いて、ボースは答えた。 「おうよ!」 ポールは窓から城の中庭を眺めていた。 中庭には、紺色と濃緑色の軍服を着用した兵士達が集まり出していた。 (僕も戦いたかったな…) "お前らには大事な仕事を任せたい" あえてエドがここに自分達を残したのはわかっていても、置いてきぼりにされたような気分だった。 「戦列に加わりたかったですか?」 そんなポールの様子を見て、タンザナイト卿が声をかける。 ポールは慌てて頭を下げた。 「・・・手を止めてすみません!」 タンザナイト卿は優しくポールを諭す。 「今の私たちの戦場はここですよ。解毒薬の開発に成功すれば多くの兵士達が救われる。味方も敵も」 (だからこの人はここまで頑張れるんだ) 解毒薬作りに着手して以降、タンザナイト卿はほとんど不眠不休で作業を進めている。 何度も実験と失敗を繰り返し、それでも諦めないのは、人を救いたいという強い意志があるからだ。 「我々は我々の役割を果たしましょう」 タンザナイト卿は、エドやウィルとは違う強さを持っている。 ポールはようやく、自分が今していることに意義を見いだした。 「・・・はい!!」 中庭で、兵士達は歩兵隊と弓兵隊に分かれて整列した。 そして最前列には、歩兵隊の指揮を担当するウィルセイ、エド、ボース、そして弓兵隊を指揮するリリー、ガウェインが並んだ。 リリーは、隣にいるボースの顔を覗きこみ、話しかけた。 「ボース・・・出陣前に、言っておきたいことがあって…あの・・・こないだは、ありがと」 「えらく弱気ですねえ、珍しい」 「失礼な!!お互い必ず生きて帰るわよ」 (良かった。通常運転じゃねえか) すかさず言い返したリリーを見て、ボースは微笑む。 「当然でしょう。姫様に助けてもらった生命、無駄にはしないっす」
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