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“俺はずっとずっとお前の背中を追い続けてきた。だから一度でいい。お前と対等に向き合いたかったんだ”
茜色の空の下、ただひたすらに前を向き走る二人の少年がいた。
そして二人を必死に追いかけるワンピース姿の少女も。
「ブラッドリー、ラヴェンダー、早く来いよ!!」
一人は名門貴族の跡取り息子。
「ウィルセイ!先に着くのは俺だからな。負けないぞ!!」
一人は使用人の息子。
「二人とも待ってよ!」
一人は中流貴族の娘。
三人は身分差があるにも関わらず、どこへ行くにも何をするにも一緒だった。
沈む夕陽を眺める彼らは皆輝くような笑顔だった。まだ希望あふれる未来しか想像出来なかった頃のこと―
そして15年後。
ディアマンテ王宮の回廊を歩く二人の青年がいた。
武官のトップ近衛隊長に任命されたウィルセイ、文官のトップ宰相に任命されたブラッドリー。
乳兄弟で親友同士の彼らはこの春即位した新国王の下に集った忠臣の中でも特に際立った才能の持ち主として注目されている存在だ。だが注目される理由はそれだけではない。
黒髪に青い瞳のウィルセイ。
焦げ茶色の髪に茶色い瞳のブラッドリー。
どちらもすらりとした体つきで、容姿端麗、社交界に集う女性たちから熱い視線を浴びている二人でもあった。
人気がないことを確認してウィルセイが口を開いた。
「今朝の会議、陛下の跡継ぎについて上手くまとめたな。さすがだ」
新王リチャードと3年前に嫁いできた王妃レティシアの仲は上手くいっていたが未だ子を授かっていなかった。
そこで当面は王の妹、リリー姫を王太子位に据えることをブラッドリーが提案し、全会一致で可決されたのだ。
「誰が見てもリリー姫が適任だろう。武官トップクラスの才能も持っている」
リチャードは知略に長けた新王として評価されているが、リリー姫は剣と弓の名手として有名だ。
「これで陛下に跡継ぎが出来れば最高なんだが・・・」
「こればかりは授かりものだからな」
二人は揃ってため息をついてしまった。
ブラッドリーは慌てて話題を変える。
「それより、お前ラヴェンダーとはどうなってるんだ?」
「どうって…最近は忙しくて会いにも行けてない。それに正直なところ先が見えない状況なんだ」
ウィルセイは視線を落とした。
「反対されてるのか?」
「まあそんなところだ。彼女の家柄を問題にする輩もいてな」
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