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「あなた達、仕事中に私語はよくないわ。料理長に叱られるわよ」
ラヴェンダーがやんわりとたしなめると少女達は素直に頷き、手を動かし始めた。
ラヴェンダーは黙々と手を動かしながら思い出す。父母を亡くし一番辛かった時も、ウィルセイとブラッドリーが支えてくれたから乗り切れたことを。
だがいつの日からだろう、彼女はウィルセイの姿ばかり目で追うようになっていた。
身分が高いにも関わらず誰にでも自然体で接する彼の姿に、そして父親を亡くし当主として一族を背負う重圧に耐えながら、なお誇り高く前を向き続ける彼の強さに心惹かれたのだと思う。
けれどもウィルセイと自分では住む世界が違う。彼はいつかしかるべき身分の女性と結婚する。
身の程知らずの愚かな女が想いを伝えてはかえって迷惑なだけだろう。
自分はもう夢見がちな少女ではないのだからわきまえなければいけない。
そう頭ではわかっていても諦めきれない想いをラヴェンダーは抱え続けていた。
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