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ボースは各ブロックを回り、小隊長への注意喚起を行っていた。
回廊付近にさしかかった時、彼は違和感を覚えた。
―配置したはずの場所に人の気配がない。
ボースはいったん深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。
感覚を研ぎ澄まし、周囲を観察する。
かすかなうめき声を耳で捉え、その方向に目を向けると、庭園の茂みの陰に紺色の隊服が見えた。
「お前ら、大丈夫か!?」
倒れていた隊員達は、全員負傷している上に拘束されていた。
ボースは素早く全員の戒めを解いていく。
「副隊長・・・申し訳ありません。黒ずくめの集団に不意をつかれて…、ラヴェンダー姫が…」
小隊長の指はうっそうとした森へと続く北門の方角を指していた。
(姫さんが連れ去られた…)
ボースはあえて安心させるようにぽん、と頭に手を置く。
「詫びはいらん。後は俺と隊長で対処する。早く詰所で手当てをしてもらえ」
(公の場で一国の側室さらうとか普通あり得ねえだろ、クソッタレ!!)
部下への優しい態度とは裏腹に、心の中で悪態をつきながら、ボースは闇の中へと駆け出した。
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