2.日常

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この日ウィルセイは朝早く出勤した。王宮の敷地内にある近衛隊詰所で紺色の隊服に着替え、次に武器庫へ向かう。 「隊長、おはようございます」 「おはよう。夜番ご苦労」 見張りに立っていた隊員に声をかけたウィルセイは、武器庫内に入り今日の訓練で使う武器の点検を始めた。 ディアマンテ王国の軍事組織は王都を守る近衛隊と地方要衝都市を守る護民軍で構成され、近衛隊長のウィルセイはそれらを統轄する立場である。 リチャード王の方針に沿い、ウィルセイも領土拡大より国内の治安維持を優先した組織運営を行っている。 「よっす!隊長、お早いですねえ」 「おはよう、ボース副隊長」 「そう呼ばれんの、未だに慣れねえなあ」 そう言って豪快に笑ったのは副隊長のボースである。彼は護民軍出身でウィルセイより15才年上の39才、恵まれた体格を生かした徒手空拳での戦闘を最も得意としている。 温厚篤実な性格もあって彼を慕う隊員は多い。一昨年まで護民軍にいた彼をウィルセイが副隊長として抜擢したのには理由がある。 元々近衛隊は貴族のみで構成されており、平民で構成される護民軍から近衛隊員に昇進する者は稀だった。 ウィルセイも入隊時から近衛隊員になれたため護民軍とのつながりは薄い。 だがウィルセイは、身分にとらわれず能力があれば近衛隊員になれる、また近衛隊出身者も護民軍高官になれる柔軟な組織を作ることが理想的だと考えている。 本格的な人事交流システムを構築するには3年ほど期間が欲しいが、手始めに護民軍にも人脈を持っているボースに力を貸してもらいたいと頼んだところ、本人も快諾してくれたのだ。 「今日の集合訓練はどうするんすか?」 「朝番、夜番の交代に合わせて2回実施だ。私と剣の模擬戦と、あと弓の指導を」 「おおー、隊長と模擬戦かあ」 指の骨をパキポキ鳴らすボースを見てウィルセイは苦笑いした。 「お手柔らかに頼みますよ。パワー勝負では勝てそうな気がしないんで」 「ハハハッ、ご謙遜を。スピードと技術は隊長が上っすよ。さて、そろそろ朝礼いきますかあ」 二人は肩を並べて歩き出した。
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