12.訣別

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「謝る必要はない」 今度は心からそう言える。 自分はずっとブラッドリーを自覚の無いまま傷つけていた。 "お前はラヴェンダーひとすじなんだろう?" 一体どんな気持ちで自分を励ましてくれたのだろうか。 ラヴェンダーが側室として王宮に上がってから、自分はずっと苦しかった。 手を伸ばせば届きそうな場所にいるのに、決して想いを告げることは許されない。 ブラッドリーが抱え続けていたであろうその辛さを、今の自分なら少しは理解できる。 「私にも謝らなければいけない事がある。お前に黙って彼女と一線を越えた。これはその代償だ」 彼が代償と呼んだ鉄の手枷を見て、ブラッドリーの表情が歪んだ。 「ラヴェンダーのことは確かに好きだったよ。でも、それ以上に俺は…」 "ブラッドリー、早く来いよ!!" 幼い日から、ずっとずっと自分の目の前に彼の背中があった。 裏表がなくて、真っ直ぐで。 自分にないものを全て持っている彼は、ずっと自分の憧れだった。 「俺はただ、お前と対等な立場になりたくて、その一心でここまで来た。決してお前のこんな姿を見たかった訳じゃない」 自分の本当の願いは、ただウィルセイと対等な立場で向き合うことだった。 だが、彼をこの状況まで追いこんだ原因は、自分の愚かな選択だ。 今さら償うことは出来ない。ならば― 「だが、俺はお前を糾弾する立場を選ぶ。今度の裁判から、俺たちは敵同士だ」 自分自身の願いを叶えるために、彼と向き合う道を選ぶ。 それがブラッドリーのたどり着いた結論だった。 「友達でいられるのは、今日までということか」 ウィルセイは理解した。 ブラッドリーが自分と真っ向から対立する決断を下したのだと。 ならば自分もただ真っ直ぐに、彼と向き合いたいと思った。 「ウィルセイ、嘘っぱちの裁判で潰されるなんて許さないぞ。例えどんなに辛い結末になったとしても、絶対に這い上がってこい。俺はその日をずっと待ってるからな」 親友として最後の言葉を残し、ブラッドリーは去っていった。
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