13.約束

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ブラッドリーの言葉通り、ジョン卿を中心として行われた裁判で、大半の者は完膚なきまでに叩き潰された。 さも本当のように揃えられた証拠の数々。 もちろん否定する者もいたが、否定すれば夜必ず執拗な尋問が待ち受けている。 一人また一人と抵抗する気力を削がれていく中で、ウィルセイはただじっと耐え続けていた。 ブラッドリーが残した言葉を、心の支えにして。 その晩、ウィルセイは牢に入ってからも続けている日課に取り組んでいた。 手枷をはめたまま、窓の鉄格子を両手でつかみぶら下がる。 その体勢から両足のつま先を揃え、直角になるまでゆっくり引き上げていく。 日当たりの悪い場所とはいえ、夏の夜はまだ蒸し暑い。 1回2回・・と回数を繰り返すうちに大量の汗が滴り落ちた。 (少しなまったな) 近衛隊時代は様々な器具を使って肉体の鍛練が出来た。 例え簡単な方法でしか鍛練出来なくても、今は法廷と牢を行ったり来たりするだけ。 継続して取り組まなければ体力は落ちる一方だろう。気力を保つためにもせめて体力は維持しておきたかった。 自由の効かない両手を使い汗を拭きながら彼は思う。 こうでもしないと毎夜を乗り切れない自分は、本当の意味で独りになったことがなかったと。 "ウィルセイ" 親友。 "ウィルセイ様" 愛しい女性。 "旦那様" 使用人たち。 "隊長!!" 大切な仲間たち。 頭を空っぽにしないと、懐かしさで心が壊れてしまいそうだ。 普段聞こえてくるはずのない靴音が聞こえてきた時は、一瞬自分の正気を疑った。
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