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はずみで周りにいる全員の顔がボースに見えてきてしまう。
馬鹿げた妄想なのだが、ボースの集団がわいわい話しているのが面白おかしく、ウィルセイは思わず吹き出してしまった。
「ウィルさん・・・だいじょぶですか?」
「なに急に笑い出してんだよ」
「いや…何でも…」
周囲にさんざん気味悪がられながらも、ウィルセイはしばらくの間、腹を抱えて笑い続けたのだった。
共同宿舎2階にある寝室は、男性と女性で区画を分け、二人一組で使うシステムになっている。
現在ポールが一人で部屋を使っているということで、自動的にウィルセイはポールと相部屋になった。
部屋に入ると共同で使う衣装棚と寝台が二つ。そして書き物をする机が1台用意してあった。
「ウィルさん、寝台はどちらを使いたいですか」
ポールの質問に、ウィルセイは服をしまいながら答えた。
「空いている方でいいですよ」
寝台の上に寝間着が用意してあったので、遠慮なく使うことにする。
首にかけていたラピスラズリのペンダントは外し、寝台脇の小さな机に置かせてもらった。
着替え終わった途端、なぜか寝台の上に正座しているポールが話しかけてきた。
「あの…やっぱりかしこまって話すのやめましょうよ。なんか距離感があるし、何より僕が気恥ずかしいんで」
ウィルセイは寝台に腰かけ、ポールと目線の高さを合わせる。そして笑って頷いた。
「わかった。これから一緒の部屋だし、気楽に話すことにするよ」
その一言に、ポールはホッとしたような笑みを浮かべた。
「ポールはなぜ戦士になろうと思ったんだ?」
ウィルセイは布団に入り、寝転がったままポールに訊ねた。
彼が闘技場前で出迎えてくれた時から、ずっと違和感を感じていたからだ。
「自然とですかね。戦士になりたいというよりは、エドさんみたいに強くなりたいと思って」
ポールは淡々とした口調で話し続けた。
「ウィルさんは昔ここで戦があったって知ってますか?」
「・・・10年前の戦のことか?」
―10年前、北のマイカ王国がディアマンテに攻めこんで来た。
圧倒的な兵力差にコンキスタの護民軍は苦戦を強いられ、他の地方の護民軍、さらには王都から近衛隊まで増援に向かわせ、ようやく国境の防衛に成功したのだ。
当時近衛隊の小隊長だった父もコンキスタへ派遣され長く家を留守にしたことを、ウィルセイははっきりと覚えている。
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