15.北の戦士達

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「はい。実は僕も含めてここにいる戦士達はほとんどあの戦で親兄弟を亡くしてるんです」 ウィルセイは相づちを打つことすら忘れた。 今の彼からは全く想像もつかない過去だったからだ。 「僕を引き取ってくれたのもエドさんでした。宿舎を設けて皆で暮らすようにしたのも、他の闘技場のように戦士の生死を問わない戦闘を行わないのも、全てエドさんの進言があったからだって聞いてます」 ポールは真剣なまなざしでウィルセイを見つめる。 「ウィルさん、明日から自主訓練一緒にやってもらえませんか?今日の模擬戦でウィルさんはエドさんと対等に闘ってたから・・・。僕、色々教えてもらって、早く一人前になってエドさんに認めてもらいたいんです」 ただ純粋に、強くなりたいと願うポールにウィルセイは好感をもった。 今まで当たり前のように、近衛隊という恵まれた環境で過ごしてきた。 自分は近衛隊長の職務に徹するあまり、いつのまにか彼のような熱い気持ちを失っていたのかも知れない。 ポールと共に、自分もまた成長出来たらいいと、ウィルセイは素直に思った。 「もちろん構わないよ」 ポールの表情がぱあっと明るくなった。 「ありがとうございます!!」 (弟がいたら、こんな感じなんだろうか) ウィルセイは穏やかに微笑む。 「じゃあしっかり身体を休めないとな。おやすみ」 「おやすみなさい」 蝋燭の灯りを吹き消した後も、ウィルセイはしばらく天井を見つめていた。 (あっという間だったな) ただのウィルとして過ごした初日。 新たな生活、新たな出会い。 幸い戦士達とはうまくやっていけそうな気がする。 (ラヴェンダー…) 今、王都はどうなっているのだろう。 皆どうしているのだろう。 そんなことを考えつつも、気疲れした上に酒もまわったせいか、自然とまぶたが重くなる。 (だめだ…眠い) あっさり思考を放棄して、ウィルセイは眠りについた。
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