18.かの地へ

3/8
前へ
/196ページ
次へ
4人が目指すのはコンキスタ。 忠誠心の篤い臣下を行かせた北の地。 "自分は仲間を募って合流します。北の護民軍なら多少顔が利きますので" 「無事合流出来るといいんだけど…」 リリーが懸念を口にした時、背後から複数の靴音が聞こえてきた。 迫り来る追手の足音を聞き、リリーはその場で立ち止まる。 そして彼女は覚悟を決め、振り向いた。 あの夜、決意したのだ。 自分の手を汚してでも、大切な存在を守ると。 リリーは矢をつがえ、引き絞る。 ヒュッと音をたて飛んだ矢は、一撃で追手の肩を貫いた。 「兄上、姉上達を先導して!!私が殿(しんがり)で追手をくい止めるから」 リリーの気迫を感じたリチャードは頷く。 「無茶はするなよ」 「誰に物言ってんの」 リリーは迷いなく答える。 (お願いだから早く来てよ…私が持つうちに) 彼女は矢を次々に放つ。 全ての矢が正確に敵を射抜く。 「女だからってなめると怪我するわよ!!」 隠し通路の壁を走り、リリーは飛んだ。 膝げりが顔面に決まって一人。 着地してすかさずの蹴りで一人。 振り向きざま遠心力を利用し、弓で殴り倒して一人。 彼女は屈強な男達を次々倒していく。 「リリー、走れ!!」 リチャードの声が通路内に響く。 見れば隠し通路の出口がすぐそこに見えていた。 外に出た途端、激しい雨が4人に降り注いだ。 更なる追手を倒すためリリーは弓を放ったが、吹き荒れる風で軌道が狂い、命中率はどんどん下がる。 仕方なく、彼女は弓を使った接近戦で確実に敵を倒すことを選んだ。 夜の雨は容赦なく体温を奪っていく。 気づけばリリーの肩は大きく上下していた。 いくら腕が立つとは言え、体格差のある相手と戦い続ければ彼女も消耗する。 「リリー、危ない!!」 レティシアの悲鳴に、リリーは死角から敵が迫っていることにようやく気づいた。 (やっ…ば…)
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加