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その時。
「うぉらぁぁっ!!」
リリーに迫っていた敵が、遠くまで吹っ飛ばされた。
風のように現れ、拳ひとつで敵を倒したその男は―
「元・近衛隊副隊長ボース、以下有志一同、ただいま参上!!」
(来てくれた…)
リリーはほっと安堵のため息をつく。
どしゃ降りの雨の中、自分の横で仁王立ちするボースの存在が、とても頼もしい。
「姫様、お待たせしました」
ボースが引き連れて来たメンバーはざっと20名。
近衛隊員の地位を捨てて、自分達の要請に応えてくれる者がこんなにいるとは思わなかった。
ニッと笑い、リリーは素直な気持ちを伝える。
「確かに待ったけどね・・来てくれてありがとう」
「お前ら!!近衛隊の誇りにかけて、陛下達を護り抜け!!」
ボースが檄を飛ばすと、既にリチャード、レティシア、ラヴェンダーを一人ずつ取り囲むようにして陣形を組んでいた元・近衛隊員達は一斉に気勢を上げた。
一方、ジョン卿の陣営では、伝令役として走っているリアムが、状況を報告していた。
「近衛隊隊長代行、以下総勢20名がリチャード一行に合流し、現在交戦中。我々の私兵が押されています。奴らありったけ武器を横領した模様です」
「全く忌々しいな」
彼らの行動は計算外だった。
当然、武器だけでなく移動手段となる馬も奪われているだろう。
(元隊長に似て、厄介な堅物どもだ)
自分の脅迫を一度は毅然と突っぱねようとしたウィルセイの表情を、ジョン卿は思い起こしていた。
「仕方がない。"例の実験材料"を解き放て」
ジョン卿の指示に、珍しくリアムが眉をしかめる。
「使うにはまだ早すぎます。下手すれば暴走しますよ」
しかし、ジョン卿は動じなかった。
「利用価値のある4人以外は最悪殺しても構わん。・・・使え」
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