18.かの地へ

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「ボース、あなたの家族は大丈夫なの!?」 背中合わせに戦いながらリリーが訊ねる。 「心配は無用です。嫁の実家に行かせました」 ボースはキッパリと答える。 「今さらだけどごめん。巻き込んで」 リリーの言葉に、ボースは答えた。 「家族を理由に王家への忠誠を捨てたら、嫁に離縁されますよ。俺」 リリーはふっと笑った。 「そうなの!?」 「家叩き出されたっすね。間違いなく」 そんな時だった。ラヴェンダーを囲んでいる隊員達の陣形が崩されたのを、ボースは視界に捉えた。 (まずい!!) 「姫様!!」 同じく事態を察したリリーは頷いた。 「早く行って!」 「こちらへ来い!!」 追手の一人がラヴェンダーの濡れそぼった髪を掴み、思いきり引っ張る。 「いたっ・・・」 無理な力が首にかかり、ラヴェンダーは思わずうめき声を上げた。 「姫さんに何してんだこらぁぁっ!」 救援にきたボースが大声で叫びながら割って入った。 ラヴェンダーの髪を掴んでいた男の手首を軽々と捻りあげ、ぶんっと放り出す。 放り出した先には追手がもう一人。避ける余裕もなく二人はもつれ合い倒れた。 さしのべられた手をとり、ラヴェンダーは立ち上がった。 「ボースさん…ありがとうございます」 先程までの鬼神のような戦いぶりから一転して、ボースは優しく声をかけてくれる。 「もう少しで馬をつないでいる地点に着きます。頑張って下さい」 そしてラヴェンダーを安心さぜるように笑った。 「北へ行って隊長と合流するまで、俺達があの人の代わりにお護りしますから」 その時だった。 「ボース隊長代行!!」 ボースは咄嗟にラヴェンダーの前に立ち、剣を抜き放つ。 彼と剣を交えていたのは、追手を指揮していたブラッドリーだった。 「今なら反逆、横領の罪その他もろもろ不問に出来る。おとなしく投降しろ」 「護国卿の傘下に加わるなんてまっぴら御免だ、ふざけんな!!」 すかさずボースは遅れて救援に来ていたステラン元・小隊長に指示を出す。 「ステラン、姫さん連れて先に行け!!」 (ブラッドリー・・・!) 振り向いたラヴェンダーは追手としてやって来た幼なじみの姿を確認する。 ほんの一瞬だけ、彼と視線が合う。 だがブラッドリーはすぐに目を逸らした。 「姫様…行きましょう!!」 ステランに促され、ラヴェンダーは前を見据え、そして共に走り去った。
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