33.ふたたびの春

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見上げた空は、どこまでも青く美しい。 今も、あの日の夢にうなされて飛び起きる夜がある。 心に刻まれた後悔が消えることはないだろう。 いつか二人で作ろう。 身分も格差もない、二人同じ場所にいられる世界を。 現実はどのくらい彼が願った世界に近づいているのか。 問い続ける。 アメジスト家の墓所で眠るブラッドリーに。 この胸の中にある、彼の魂に。 答えは、簡単に見つかるものではないだろう。 「あなた、お帰りなさい」 ウィルセイの帰宅に気づいたラヴェンダーは庭仕事の手を止め、声をかける。 「ちちうえ!」 自分の腕の中に飛び込んで来た黒髪、青い瞳の幼い男の子を、ウィルセイは笑顔で抱き上げた。 「ただいま」 それでも生きる。 彼の願いも背負って、生きていく。 与えられた生命を。 未来に繋いでいくために― 【完】
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