1人が本棚に入れています
本棚に追加
「……仮にこれが現実だと仮定しちゃったりしないでもないですよ? 僕、大人なんで」
「現実にゃ! 今まで何だと思ってたのにゃ!」
「夢だろ常識的に考えて……夢なら痛くないって誰が決めたんだろうね。知ってる? 夢見る人と書いて儚いっていうんだ……」
「錯乱するにゃー! ストップ・ザ・現実逃避!」
「日本語でおkってヤツですかあー? 三歩譲ってこれは現実として、そういう宗教みたいなのはノーサンキューです! 小嶋さんのしつこい勧誘を断るためにも仕事を辞めたのに、どこまで追っかけてくんのさ!?」
「一体、何があったにゃ……」
呆れたような声を上げ(どこから発声しているのかはもう考えるのをやめた……)、こけしがふわふわ飛んで上着の胸ポケットに潜り込む。軽い重量感が、僕の逃げ出したい気持ちを力いっぱいにプッシュしまくった。
僕のハートに今すぐアクセス!
「忠告しておくと、ウチの声はお前以外の誰にも聞こえてないにょー☆ 変人扱いされたくなかったら、落ち着くにょー♪」
「……」
無表情のまま陽気に騒ぐそいつを無言で力なく見下ろし、僕はトボトボと歩き出す。
仕事を辞めた瞬間以上の脱力感が、その足取りを重くしていた。
最初のコメントを投稿しよう!