二章

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 女の花は夜ひらく。  都合が良いのか悪いのか、デビュー戦はその日の夜だった。  なお、こけしが昼間に安アパートの僕の部屋で散々暴れたことは、この際もう描写しなくていいんじゃないかと思う。  雪が降ると、わけもなく悲しくなりません……? 「むうん! キタキタキタキター! 事件にょ! 変身するにゃ、この超ハイパーミラクル不潔なエロニート!」 「まだエロ本の件を引きずってるんスか! いいでしょ別に。俺、大人なんスから!」  ぎゃあぎゃあ喚くこけし人形を尻目に、両腕を胸の前で交差させる。  後は「変身しちゃうぞ」という明確な意思をもって合言葉的なものを適当にシャウトしちゃえば変身完了――というシステムになっていることを知ったのは、しばらく後のことだ。  無知な僕は底意地の悪いビッチ妖精の陰謀に乗せられ、叫ぶ。  はじめての変身の際と同様に。 「マ……! マ、マジカル☆ミラクル★バルーナちゃん!」  こっ恥ずかしい合言葉とともに変身完了。  なお、変身シーンについて詳細を描写する気はない。  おまえは自堕落な生活でやや肥満気味の24歳男子の裸なんて見苦しいものを見たらキチッとマイページに戻ってからスルーするだろう?  誰だってそーする。  ぼくもそーする。  同じく変身したこけしに促され、僕はがらっと窓を開けてベランダに躍り出る。  説明しよう!  風属性の魔法少女バルーナちゃん(仮)は地球の危機に「どげんかせんといかん」と立ち上がった風精霊さん達の力を借りるという本気でアホ臭い原理で、この大空に翼を広げ飛んでいけるのだッ!  さあ、無限の大空へ!  ここは二階だけど多分大丈夫!  落ちたところで死にはしない!  あ~い、きゃ~ん、ふら~い!
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