二章

3/12
前へ
/54ページ
次へ
「……って、なにを引き返しておるのじゃ!」 「いや、やっぱ戸締りしとかないと不安で……」 「かあー! なんというノリの悪いおのこじゃ! こんな豚小屋みたいな部屋に盗むものなんぞあるか! 獲物は早い者勝ちなのじゃぞ貴様あーっ!」 「オレの貯金はまだ100万は残ってるんスよ! プーで保険証もロストしたオレには金がまさに命っス! 生命線っス!」 「魔法少女は子供たちの夢じゃ! アイドルじゃ! 生々しい話をするな!」  最近はむしろ大きなお友達のほうが熱狂的でしょという言葉を飲み込み、無言で窓を閉めた。  別にメタ発言とかじゃないけど、今後きっと魔法少女ものって流行ると思うんだよね。  ひだまりスケッチの絵柄でアクションするやつとか。  鍵を閉める手の小ささに確かな違和感を覚えつつ、ふと「体重はどこにいったんだろう」などと考えながら家の鍵を探す。  身長170cm、体重68kgというオーバースペックなピッツァ数値をどんな理屈でこの小さな体に仕立てたんだろうか。  それを魔法の一言で片づけるのは、人として終わっている気がする。  がつがつと外から窓を叩くこけしに手振りで玄関から出ると伝え、サルマタケよろしく脱ぎ捨てたパンツの下から「こんにちわ」と顔を出す家の鍵を拾った。  フリフリのアイドル衣装を揺らして玄関に到着すると、ドアノブの位置がやたらと高い。  自然、手足も短くなってるわけだと分析しつつドアを開けると、回り込んできたこけしが淡い緑の長髪を揺らし、鬼のような形相で僕を見下ろしていた。 「き~さ~ま~は~!」 「す、すこしのしんぼうじゃ……待つっス! 鍵を閉めたら終了っス! 疾風のように勇者特急するっスから!」
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加