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「やけにこだわるのう? そうそう、貴様の方が眉目秀麗じゃぞ」
「それ、何の得にもならんスよ」
こけしが指摘する通り、四級魔法少女ヒバリちゃんはまあ、その……美人、というわけではない。
彼女の顔は僕と違って作り物ではないらしく至って平凡な日本人的で、ロングストレートのピンク髪はかわいいというより悪目立ちしているだけに見える。
それに僕、ロリコンじゃないですし。
ついでにコスプレ否定派なんで微塵にも萌えませんよ。
ま、そんな中傷にも聞こえかねない批評はさて置くとして。
「やれやれ、早い者勝ちとはいえ獲物を奪われてしまったのう」
「無事に勝ったみたいっスね……じゃ、帰りますか」
光となったコーボルトを前に肩で息をする同業者を見下ろし、出遅れ上空で見物していただけの僕達がすごすごと帰ろうとした時、こけしが異変に気づいた。
「もう一匹いるのじゃ!」
いる。
膝をつく少女の背後に、黒い体毛を持つもう一匹のコーボルトが。
しかも彼女はその気配に気づく様子もない。
冗談じゃないぞと急行しつつ、「後ろだ!」という声を風の力で“送る”。
声は届いたようで動く素振りを見せるものの、消耗が激しいらしく、動作が鈍い。
「ちくしょう、高かったんだぞ……!」と呟きながら、装着していた作業用のゴーグルを外し、コーボルト目がけて投げつけ、“撃つ”。
「……入っただろ!」
直撃。
脳天に風と重力によって加速された“弾丸”を受け、黒い塊がよろめく。
その姿を視界の端に捉えながら空中で身をひねり、足から落下する姿勢で右足を振り上げた。
その敵意に満ちた表情が視認できる距離に到達した瞬間、一気に振り下ろす。
ぐちゃ、と頭蓋を潰した感触に思わず鳥肌を立たせながら、反動で崩れた姿勢を整え、立ち尽くすヒバリの前に着地した。
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