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刹那、閃光が、僕達を照らす。
間近でそれを直視してしまったために悶絶してのたうち回っていると、ヒバリが消え入るような声で「あの……大丈夫ですか……?」とおそるおそる話しかけてきた。
大丈夫と何度もうわ言のように繰り返しながら目を開ける。
ヒバリと、その相棒であろう小妖精が目を丸くして僕を凝視していた。
数拍の間をおいて、ヒバリが興奮した様子で詰め寄ってくる。
「すごいすごいすごいすごい! あなたも魔法少女なのね! ワタシ、四級魔法少女ヒバリです!」
「は、はあ……」
ヒバリが無邪気に「お友達ができて嬉しい!」などとはしゃぎながら、名前を尋ねてきた。
「え、えーと……その、二級のマサキ……です」
こけしがヒバリの名を知っていたように、ヒバリの相棒も僕の登録名を名簿とやらで知っているはずなのだ。
いかん。
ちゃんとそれなりに考えた偽名で登録しておくんだった。
自分で名乗るのは結構恥ずかしいぞこのフルネーム。
フリーズしていると、案の定、ヒバリの相棒妖精さんが余計なことを言う。
「二級魔法少女マサキって……前代未聞の二級スタートを果たしたって噂の、あの荻ノ花真咲!?」
ちなみに、僕の本名は荻野柾木です。
ひねりがなくてごめーんね。
まる。
「ええ、まあ、実は……」ともごもご答えながら、じりじりと距離を離した。
一方的に「時の環が接する所でまた会うかもね!」と話を打ち切り、脱兎の如く逃げ出す。
正体がバレたらカエルの姿にされる……ということはないんだが、小学生の女の子と何しゃべったらいいんだ二十代半ばのおっさんが。
「おや……? 何じゃ、二級魔法少女・荻ノ花真咲と風妖精コッコクェドゥースイナクシャータリアここにあり、と名乗りを上げんと思うておったのに……」
不満そうに口を尖らせるこけしを強制連行しつつ、月下の空を駆ける。
今日も無収入のまま、またもや出費だけがかさんでいったボランティアニートの春は肌寒いぜちくしょう。
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