四章

2/15
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ
 ゴールデンウィーク……。  時はまさに世紀末、女神アテナの血を受け蘇った青銅聖闘士は最下級にも関わらず最上級の黄金聖闘士を凌駕することを意味する。  その起源は遠く安土桃山時代に伝わったギリシアの兵法書『なんとなく、レアメタル』にあるという。  しかしフェニックス一輝はそんな理屈の裏打ちもなしにただひたすら絶対無敵であることは言うまでもない。  民明書房刊『毎日がカレー曜日』より。 「連休だからって……」  念のためにあらかじめ言っておく。  ひがんでないよ。  いつものように人里離れた「戦場まで何マイル?」と言わんばかりの大自然の中にいたのは侵略者だけではなかった。  ここで詳細を語ることは敢えてしないが、半裸の若い男女が一組、いやがったのだ。  誰もいないはずの山林の中に。  こんなところで何をしていたのかは深く考えないで。  ……もう一度言う。  ひがんでないよ。 「ここぞとばかりに盛りやがってバカップルが!」  逃げ遅れたというか男の方に置き去りにされた女の後ろに立ちふさがり、巨大な猪に見えないこともない豚頭の牛――カトブレパスの鼻面に、ファンシーなデザインながらもやたらと丈夫な靴に覆われた爪先を叩きこむ。  噴き出した鼻血に染まった右足を振りかぶり、第二撃。  振り上げた右足を軸に空中で身体をひねり、左足での後ろ回し蹴りによる第三撃を浴びせたところで閃光。  咄嗟に目をつむり、後ろを振り返る。 「おおっと、見ちゃいけない……ケガはないかい、お嬢さん」 「……あのおなごならとうの昔に逃げてしもうたぞ」 「そっスか……まあ、それでいいんスけどね……」 「しかし、あのおのことおなごはこんなところで何をしておったのじゃ?」 「そりゃ野外プ……え、えっと……その……昆虫採集っスかね……」
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!